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上手に描くことより “絵を描く体験”をしてほしい パステルシャインアートと公認会計士でパラレルキャリアを実現|Tomoe Tabata
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先生のプロフィール
田畑智恵さん(Tomoe Tabata)
誰でも簡単にきれいな絵が描けるパステルシャインアートのお教室tomoepastel主宰。
日本パステルシャインアート協会認定 マスターインストラクター、公認会計士。
多くの人にアートに触れる体験をしてほしいという想いから、主に初心者向けのワークショップを開催。基本のモチーフをもとに、参加者に自由にアレンジして表現してもらうことを大切にするのが教室のスタイル。パステルシャインアートの講師を務めるほか、公認会計士としても幅広く活動している。 -
目次
- 「教えたい」から入ったパステルシャインアートの世界
- 公認会計士としてのもう一つのキャリア
- 絵で“自分”を取り戻す
- 会計士の知識を生かして講師デビュー
- 上手に描けなくてもいい
- パラレルキャリアの実現へ
- 絵を教え “続ける”ことで社会と繋がれる実感
撮影・取材・文:徳橋功(インタビュアー、My Eyes Tokyo編集長)
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皆さんは「パステルシャインアート」をご存知でしょうか?
1995年に日本で生まれた表現技法で、粉末にしたパステルが生み出す、丸みを帯びた優しい風合いが特徴です。
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今回ご紹介するのは、このパステルシャインアートの講師を務める田畑智恵さんです。
柔らかい空気を身にまとった田畑さんは、これ以上に無いくらいこの講座の講師にピッタリ。でもソフトなルックスから想像できないくらい、太くしっかりとした芯をお持ちの方です。
“人や社会とつながるために”アートの世界に入った田畑さん、実は意外な素顔とご経歴の持ち主でした。
「教えたい」から入ったパステルシャインアートの世界
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まずはパステルシャインアートとの出会いについてお聞かせいただけますか?
もともと小さい頃から、絵を描いたり物を作ったりするのが好きでしたので、アート自体はずっと身近にありました。
パステルシャインアートを知った直接のきっかけは、1冊の本との出会いです。たまたま本屋さんに行った時に「一瞬で絵心の扉を開くパステルシャインアート 世界でいちばんやさしい絵の描き方」(コスモトゥーワン刊)という本を見つけたんです。
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パステルシャインアートはまだ始まって20年ほどの新しいアートなんですね。その本にはどんなことが書かれていたんですか?
パステルシャインアートには3つの特徴があります。
・楽しく簡単に描けるアート
・コミュニケーションとしてのアート
・セラピーとしてのアート
15センチ四方の画用紙にコットンを使ってパステルの色をなじませていく、という本当に簡単な手法で「世界で一番やさしい」という言葉にまず惹かれました(笑)。本を読んでみると「10分で楽しく描ける」ことのほかに、「自分でも気づいていない自分の可能性を開く」というヒーリングの効果もあること、そして「インストラクターの資格が取れる」ことも書いてありました。
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なるほど。確かに優しく心が和むタッチです。インストラクターの資格もちゃんと確立されているんですね
そうなんです。簡単ということは私にも描けて、かつ手法が体系化されているのであれば「教える」こともできるのではないかと思って始めました。
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「自分でやってみたい」と「教えたい」の間にはかなりが開きがあるようにも思いますが、「絵を教えたい」と思ったのはどうしてですか?
以前から漠然と「絵の教室を開きたい」という想いを持っていました。
実は私には、もう一つ公認会計士という顔がありまして。
会計士として働いている時に経験したことがきっかけで、絵を描くことで起きる気持ちの変化を、いろんな人に体験してほしいなと思っていたんです。
公認会計士としてのもう一つのキャリア
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なんと、公認会計士とは!驚きました。アートとは一見真逆のお仕事のようにも感じますが、公認会計士になった経緯をお聞かせいただけますか?
大学では社会学を専攻していたんですが、友人から誘われて行った専門学校のセミナーで、会計の仕事に興味を持ちました。それで専門学校に通って勉強を始め、大学3年生で公認会計士試験に合格しました。
そして大学卒業と同時に、今も勤めている監査法人に入社しました。
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社会学を学びつつも会計士というキャリアを選んだ、その魅力とはなんだったんでしょうか?
そうですね、会計監査という立場から、様々な業種のクライアントさんにお邪魔して仕事ができる点でしょうか。一か所にとどまらず、たくさんの世界を見ることができる点が、好奇心旺盛な私にとってはとても魅力的でした。
また、会社の生きた数字を見ることができる点もおもしろかったですね。数字から、取引内容や経営判断などさまざまな背景が見えてきます。最終的には世の中に出す数字を監査するということは、大きな責任を伴うと同時に達成感も感じます。覚えなければならないこともたくさんありますが、それを含めてやりがいをもって、楽しんで働いていました。
絵で“自分”を取り戻す
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話を戻しますが、会計士の経験から「絵の教室を開きたい」と思いを持ったきっかけとは?
会計士の仕事は大変やりがいのあるものでしたが、非常に忙しい職場でした。毎日深夜まで紙やパソコンに向かって数字と格闘するうちに、入社から約1年で、過労により体調を崩してしまったんです。
その後、体力回復に向けて休養しながら、少しでもはやく元気になりたくて、いろいろ調べるなかで、アートセラピーに出会いました。
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アートセラピーとはどういうものですか
アートセラピーというのは「絵を描いたり物を作って表現したりすることで心身を癒し、元気を取り戻す」というものですが、それが私にぴったりとハマったんです。当時私は人と関わることがストレスになることもあったのですが、「絵を通してなら人とコミュニケーションができる」と思いました。
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アートセラピーではどのような方法で元気を取り戻していくのですか?
例えば、自分の悩みを◯や△や□の絵で表現するんです。そうして紙に描くうちに、複雑に絡まり合った悩みの原因や人間関係が、目に見える形で浮かび上がってくるんです。それを言葉で表現しようとすると難しいのですが、ビジュアル化することで、自分はこうして欲しかったんだということがシンプルに納得できました。
他には、絵に関して自分が感じたことをワークショップ形式でシェアすることもしました。そうやって自分を受け止めてもらう経験が私に自信を与えてくれて、少しずつ自分自身を取り戻していきました。
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「自分の絵についてなら伝えられた」ということですね
そうなんです。この体験から「絵とメンタルヘルスケアを組み合わせた活動をしたい」という想いが強くなりました。
会計士の知識を生かして講師デビュー
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”絵とメンタルヘルスケア”・・・良い組み合わせですね!それをきっかけに、講師という新しい一歩を踏み出す決意をされたんですね
私はアートで元気になりました。
だから「絵で表現することで元気になる人がいたら、私も幸せだな」と思いました。その時に出会ったのがパステルシャインアートでした。
簡単でヒーリング効果もある上に、資格を取れば私も先生になれると知って、早速マスターインストラクターの資格を取りました。
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資格を取ってから実際の講座開催はスムーズにできたんですか?
最初は本当に人のご縁のおかげです。あるイベントでメンタルヘルスのための学び合う場所を提供している団体と知り合い、当時私は実績や経験は全くなかったんですけど「絵の講座をやらせていただけませんか?」と思い切って申し出てみたんです。
そうしたら「会計士さんなんですね。是非会計を手伝ってください。その代わり絵の講座をやっていただく枠もご用意します」とのお返事をいただき、パステルシャインアートの初講座を開催することができたんです。こちらで人生で初めて“絵を教える”ことを経験しました。
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会計士であることで絵を教えるチャンスを掴まれたんですね。すごい行動力!初講座の様子はどうでしたか?
それはもう緊張しました。
でも生徒さんが楽しく取り組んでいる姿を見て、私もとても嬉しくなりました。やはり絵を教える活動を続けたいと思いました。そうしたら、幸運にもその翌月に中目黒のコワーキングスペースでも講座を開くことになり、それを機にストアカに先生登録しました。
絵を描いたことが無い人にも参加いただけるよう、会計士の知識を駆使して料金設定も工夫しました(笑)。
上手に描けなくてもいい
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ストアカとの出会いは、何がきっかけだったのですか?
友人で“資料作成のプロ講師”である松上純一郎さんからの紹介です。彼は独立して様々な事業を手がけながら、ストアカで講座も開催しています。彼は”パラレルキャリア”を実行している数少ない友人でもあり、私が目指していることも純粋に応援してくれる、貴重な存在です。
教えることに不安はありましたが、「ストアカなら簡単に始められるよ」という彼の勧めもあって始めてみました。
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そうだったんですね。その後の講座の様子や生徒さんの反応はいかがですか?
登録してから毎月講座を開催しています。最近ではリピーターの方もいらっしゃってくださるようになりました。
ありがたいことに生徒さんからは「初めて描いたのに、自分の作品とは思えないくらい上手に描ける。お部屋に大事に飾っています」などの感想を頂きます。
まさに同じことを私も生徒さんに言っているんです。生徒さんが「上手に描けていないな・・・」と思っていたら、「これを誰か他の人が描いたと思うといかがですか?」とお声かけします。すると「綺麗な絵のような気がしてきました」と!
これは私が実際に、他のパステルシャインアートの先生から言われたことです。
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その視点は新鮮です!
私は、皆さんに絵を描くことが上手になってほしいわけではありません。もちろん上手に描ければそれはそれで嬉しいのですが、それよりも“絵を描く体験”をしてほしいと思っています。
特に普段あまり絵を描かない人があえて絵を描くことで何かを感じてほしいという想いがあって、それを実現するのにパステルシャインアートはピッタリでした。何といっても「世界で一番やさしい絵」ですから。
パラレルキャリアの実現へ
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先ほど、”パラレルキャリア”を実行している数少ない友人”である松上さんがきっかけでストアカを知ったというお話をお聞きしました。田畑さんも、パラレルキャリアを目指していたのですか?
そうですね。
インストラクターの資格を取ってから、たまたま参加した座談会イベントを通じてパラレルキャリアという働き方があることを知り、「そんなふうに働くことができたら、会計士の活動も絵の活動も両方できる!」と思いました。
私にとって絵は大事でしたが、同じように会計士の仕事も大事。
そのころから、講師として絵を教えながら会計士としても働く道を模索し始めました。
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イベントがパラレルキャリアを実現させるきっかけになったんですね。
その座談会で、私は「絵とメンタルヘルスケアを組み合わせたようなことをやりたい」と、主催者や他の参加者の人たちに伝えてみました。初めて講座を開催したメンタルヘルスの団体も、そのイベントを通じてご紹介いただいたのですが、思いを誰かに伝えることはとても大切だな、と実感したのもこの時です。
そして最近、今まで正社員として働いていた会社で念願が叶い、同じ職種で非常勤スタッフとして働ける事になりました。その際に改めて絵の活動ができることを確認し、私にとって自分がやりたいこと全てを実現できる環境が整いました。
絵を教え “続ける”ことで社会と繋がれる実感
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パラレルキャリアとして絵を教えるのは大変ではないですか?
私は「教室を開くこと自体は誰にでも出来る」と思っていました。クラスを開けば、その時点で先生です。
でも続けることは、決して簡単なことではありません。時には人が集まらず、講座開催を取りやめることもあります。そういう苦労から「会計士としての仕事もあるのに、絵を教える活動をやる必要があるのだろうか?」と自問自答することも、実はあります。
それでもお教室が終わるとほっとして「今日もやって良かったな」と思います。そういう気持ちや、生徒さんの笑顔があるからこれまで続けてこられたし、これからも続けていきたいと思うのかもしれませんね。
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逆に会計士の仕事を非常勤にしたことでの変化はありましたか?
講座を開いた当初は、周りから理解されないこともありました。でも講座を続けるうちに「どんなことをやっているの?」と興味を持ってもらえるようになりました。
それに非常勤になることで、アートを通じて知り合った方から会計のお仕事の依頼をいただくことも増えてきました。最初は正社員を辞めると毎日自分がいた「居場所」を失うのではないかと怖かったのですが、私の居場所は減るどころかこれまで以上に増えていっています。
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相乗効果を生んでいますね。 最後に田畑さんにとって、絵を教える活動とは?
絵は、私と人や社会をつないでくれるとても大事な存在です。
ですが絵だけを本業としてしまうと、お金のことを気にしなくてはならなくなり心に余裕がなくなってしまいそう。なので、パラレルキャリアとして、会計の仕事とうまくバランスを取りながら、自分が大切にしたいものを大切にして、活動を続けていきたいです。
絵を描く体験が、生徒さんにとって充実した楽しい時間になればうれしいです。
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ありがとうございました。
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先生のプロフィール
田畑智恵さん(Tomoe Tabata)
誰でも簡単にきれいな絵が描けるパステルシャインアートのお教室tomoepastel主宰。
日本パステルシャインアート協会認定 マスターインストラクター、公認会計士。
多くの人にアートに触れる体験をしてほしいという想いから、主に初心者向けのワークショップを開催。基本のモチーフをもとに、参加者に自由にアレンジして表現してもらうことを大切にするのが教室のスタイル。パステルシャインアートの講師を務めるほか、公認会計士としても幅広く活動している。
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