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  お茶もビジネスも一期一会。ITを駆使して日本の伝統芸能を広めたい!

お茶もビジネスも一期一会。ITを駆使して日本の伝統芸能を広めたい! アヴァンギャルド茶会|Shuntaro Kondo

  • 先生のプロフィール

    近藤 俊太郎

    近藤 俊太郎さん(Shuntaro Kondo)

    一貫してIT関連事業に携わる一方で、2005年から茶道を始める。2009年、「日中友好使節団(外務省 主催)」の一員として中国との文化交流プログラムへの参加をきっかけに総合芸術と呼ばれている茶道を広く知ってもらう活動として「茶団法人アバンギャルド茶会」を立ち上げる。

    宇宙研究者とのコラボレーション茶会(宇宙茶会)や芸術家と一緒に茶室を造る「丿貫(へちかん)プロジェクト」などのイベントを開催。また、百貨店やアートギャラリーでの現代茶の湯展示のプロデュースも手がける。

    師匠のもと修行中ではあるが、同世代の若者が気軽に茶道と接する場をプロデュースする。

  • 「茶道」というと、通常は着物を着て正座をして特別な道具を揃えたりと、少しかしこまったイメージがあるのではないでしょうか。今回お話を伺った近藤さんが開催している「アバンギャルド茶会」では、その堅苦しさに風穴を空けるべく、新しいライフスタイルとしてのお茶のたしなみを提唱しています。ITベンチャー企業の経営幹部という昼間の顔を持ちながら、週末にはお茶会を開いたり、茶道という伝統芸能をITの力で世に広めるIT茶人という顔を伏せ持つ近藤さんに、茶道に出会ったきっかけから現在の教える活動に至った軌跡を伺いました。

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  • こんにちは。今日は宜しくお願いいたします。近藤さんは幅広い分野で活動されているとお聞きしていますが、まず始めに本業というか昼間のお仕事について教えて下さい。

    私は化粧品のクチコミサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営する株式会社アイスタイルというITベンチャー企業にてサービス開発本部長をやっております。去年まではeコマースとリアル店舗の立ち上げを行ってきたのですが、現在は主に事業提携や広告サービスの仕事に携わっています。アイスタイルの前は、大手電機メーカーにてシステムエンジニアとして勤務したり、ブランド・コンサルティング・ファームにてマーケティング戦略のコンサルタントをしたり、大手電機メーカーの激動期に事業開発部に入社したりと、けっこう多岐にわたる分野でキャリアを積んできました。基本どこでも2年以上いると飽きてしまう性格なんですよ(笑)。

茶人への経緯

  • 次に茶道との関わりについて教えて下さい。ITベンチャーからどういった経緯で茶人になられたのでしょうか?

    子供の頃から抹茶に限らずとにかくお茶を飲むことは好きでした。それは単純な理由からで、実は私全くコーヒーが飲めなくて(笑)。 そして20代半ばの時に、「日本茶インストラクター」という資格があるのを知り、その検定取得に向けて勉強を始めました。この資格自体は煎茶なので、茶道とは関係ないのですが、それを勉強する過程でお茶の歴史を学び、そもそもの茶道というものをもっとよく知ってみたいと思い茶道教室を探したのが最初のきっかけです。

    振り返ると本当に偶然なのですが、その当時三洋電機に勤務していたのですが、勤務地が大阪と京都のちょうど中間あたりでしたので、お茶の先生を見つけ易い環境にいたということもありました。17時には仕事が終わる生活でしたので、普通にGoogleで「茶道」と検索して、通える距離に60代の女性の師匠が開いているお教室を見つけ、お稽古として通い初めました。

    また元々の動機として、それよりずっと以前に海外で仕事をした際に、母国の文化を誇らしげに語る外国人を目の当たりにした際に「自分は日本人なのに日本の文化について良く知らない」という疑問を抱いたという原体験があり、それ以降、日本人として日本の伝統や文化、価値観について何かきちんと語れるようになりたい、という想いを抱いていました。それでたまたま茶道発祥の地のお膝元に近い環境に身を置いていたという事が相まって、すんなり茶道にのめり込んで行きましたね(笑)

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  • 最初は習い事だったと思うのですが、いつ頃からご自身が教える立場になられたのですか?

    2008年の「日中友好条約締結30周年」の関係で外務省からの要請で日中文化交流の一員として各文化界の若手が日本を代表して中国に訪問するという企画がありました。派遣団のメンバーは40歳以下という制限があり、アイドルグループSKE48のメンバーやその他伝統芸能を含めた様々な分野の若手文化人に混じって、茶道の世界からは自分が推薦されました。当時茶道の世界では珍しく20代の男性であったということが私が目立った理由かもしれません。 その訪問滞在中に、現地で中華料理ばかり食べていると日本人の仲間が胃がもたれるだろうと思い、文化人メンバー仲間を自分の部屋に呼んでお茶をたてていました。

    茶道に触れた経験が無さそうな若い人に、お茶についてどう思っているかを聞いてみると、意外にも母親や祖母など身近なところに経験者がいて存在自体を知っている方が多かったものの、自分自身は?と聞かれると、ほとんどの人が「お金がかかりそう、敷居が高そう、正座がつらそう…」などを理由に躊躇していることが分かりました。 若い人が文化としてのお茶の楽しみを知らないのは残念だと思い、それならば自宅を「茶室」として開放してもっと気軽に自由に参加出来るお茶会を始めようと思ったのがきっかけでした。同じく訪問団で親しくなった現代アートの専門家の方々に触発され、イベントを「アバンギャルド茶会」と命名してtwitterで流したところ、周りの多くの方が興味を持ってくれて、特に若い方の中でお茶に対しての興味が意外に高いということが分かりました。

  • 今までの茶道のイメージとは異なるカジュアルな切り口で茶道を紹介したところ、それが多くの人々の興味を引いたのですね。

    実は、茶道の先生は生徒さんの集客に困っているケースがとても多いというのが現状です。伝統を重んじるがゆえにというところも多分にあるのですが、一般の、特に若い方には、「敷居の高いたしなみ」と思われているのも事実です。私は茶道のような伝統産業は、逆にITを活用することでもっと活性化できるのではないかと感じています。 TwitterやFacebookを活用した情報発信やアプローチも日々積極的に考えて実行しています。ここでは本業の仕事で培ったノウハウが活きています。情報発信する際には、フォーマルなお茶のイメージを壊すことなく、お茶の多面的や意外な一面を伝えていきたいと考えています。

茶道の魅力

  • 近藤さんにとって、茶道の魅力とは何でしょうか?

    茶道は「総合芸術」という点が私はすごく好きですね。お茶をたてるということ以外に、お茶を通じて、懐石料理、建築、書道など、様々なものに触れることができます。私は元々飽き性なので、お茶も始めたばかりの頃は「絶対1年以内に辞めるね」と奥さんに言われていたのですが、もうかれこれ8年間続いています(笑)。本来飽き性な私がこのように続けられているのは、お茶を通じて感じられる広がりが面白いからだと思います。例えば次は「茶」と「建築」について深めてみよう、或は「茶」と「書道」について広げてみよう…など、茶道をきっかけとして、自分の幅を拡げることができるという点が大変魅力です。また、茶道にはゴールがなく、研鑽(けんさん)がいくらでも出来るという点も、自分の性に合っていると思いますね。

現在の「教える活動」

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  • 話は変わりますが、近藤さんの現在の「教える活動」について教えて下さい。

    現在は 月に2日自宅で茶道教室を開いています。 一回あたり4名のセッションを、1日4回行います。それ以外にもお声がけを頂ければイベントや外部のレッスンにも参加します。 面白ネタですと数年前に「宇宙茶会」なるイベントを開催したことがあります。京都大学に宇宙物理学の磯部先生という方がいらっしゃるのですが、私の知り合いの方経由お引き合わせていただく機会がありました。磯部先生は、  「『宇宙』をもっと若い人に知って欲しい」、僕は「『お茶』をもっと若い人に知って欲しい」という各々の想いが重なり、出会って五分で意気投合してコラボ企画を決定しました。 磯部先生が管理していらっしゃる京都大学の天文台でやろうということになり「京都で『宇宙x茶会』をやります!」とTwitterで呼びかけたところ、予想以上に多くの方からレスポンスを頂き、最終的に30名くらいの方が京都に集まりました。当日は、木星を肉眼で見ながら、参加者全員でお茶をしました。

    「宇宙」と「お茶」をかけて意味があるのですかと言う人もいますが、文化を広めるにあたっては、「まずはどうやったら興味を持ってもらえるか?」という切り口を考えることはとても重要だと思っています。最終的にお茶に興味を持ってくれればいい、でも最初の入り口はお茶でなくてもいい。逆に「どうにかしてコレを教えたい!」という風に力んでしまうと、単なる教える側のエゴになってしまいますので、様々な切り口を提供し、生徒さんお一人お一人の「引っかかるポイント」に深く刺すことが大切だと考えています。一度興味を持ってもらえると、あとはそれぞれ自分の探究心でもって続けてもらえますので、まずはそのきっかけを作ることがとても大事です。 本職のITにおける「企画提案」というプロセスで、物事を多面的に見せるということを常に問われており、私にとってはそれがこの茶道の活動でも活きているのではと感じています。

  • なるほど「入り口はお茶じゃなくてもいい」というのは、教える活動をしている方にとってとても参考になる言葉ですね。ちなみに集まってこられる生徒さんにはどういった方が多いのですか?

    ビジネスマンから主婦の方まで、様々な方がいらっしゃいます。男性と女性や職業によっても先ほどの話に出てきた「引っかかるポイント」というのもかなり違ってきます。 例えば男性のビジネスマンには「茶道のこういった視点がビジネスのやりとりに役立つ」ということをお伝えするととても喜んで頂けます。茶道は「茶室」という空間の中で対峙する二人の関係からおもてなしの精神を見出すプロセスなので、実際私自身も茶道を始めてからビジネスにおけるコミュニケーションが円滑になったと実感しています。 一方、女性はビジネスとの関連性にはあまり興味を持たない方が多いですが、逆にもう少しエモーショナルな部分、例えばお花や器の美しさ、器が作られるまでのストーリーなどについては、とても深い関心を示す事があります 。

  • 深いですね・・・近藤さんにとって「教える」とはずばりどういうことですか?

    学びのポイントというものが人それぞれ違うので、生徒さんに私に合わせて頂くのではなく、私が生徒さんに合わせる。これが教えるという事なのではないかと、最近感じています。3年間教室をやってきた中で自分で出した答えなのですが、元を辿るとそもそもこのような考えに至ったのは、私の茶道の師匠の影響がとても大きいと思います。私が、教えるということにチャレンジしてみたいと考えていた時に、「教えることからは、教わることの100倍以上のことが得られるから」と、私の背中を力強く押してくれました。 自分の若さで一般の方に教えるということが初めての経験だったこともあり、悩んだこともありました。そんな時先生から、「私達(伝統を守る側の人間)は、伝統に則った茶道というものを伝えて行く。でもあなたの役割は、茶道の裾野を広げること。役割は決して一緒ではないよ。」という言葉を頂き、とても気持ちが楽になり、またやる気が出ました。 実は、茶会を始めたばかりの頃は、私の教室は「伝統的な茶会のルールに則っていない」、とクレームを頂いたこともありました。正直教えることを辞めようかと思ったこともあるのですが、先生から「叩かれてることは注目されてる、気にされていることの証!杭は出すぎたら打たれなくなるから頑張りなさい。」と励まして頂きました。このように、先生や生徒さんをはじめとして、協力してくれる方がたくさんいらっしゃったので、ここまで続けてくることが出来たのだと感じています。今は、「生徒さんが一体どういう風にしたら喜んでくれるか」、これについて試行錯誤する時がとても楽しいです。

ロジカルな理論

  • 教える際にどのようなことを意識・工夫されていますか?

    茶道の世界は実は基本「これが作法だからいいからやりなさい」というスタンスの世界です。私自身はこの考え方が結構好きなのですが、この言い方は「なぜなの?どうしてなの?」ということにこだわる今の若い人にはなかなか通じません。生徒さんが納得する形で、本来の伝統的な茶道の世界感を崩さずに、「教え過ぎずに教えること」が大切だと思っています。 実は面白いことに「なぜなのか、どうしてなのか」というロジカルな理論を全て丁寧に説明すると、案外生徒さんからは不評だったりします。茶道の世界では、結局ロジカルな部分というのはあくまで取っ掛かりでしかありません。他の人の所作を見ながら「今のは本当に美しかったな」と体感的に感じ得ていくことがより大きな要素であり納得感を生みます。ですから1対1の行為なのに私はあえて 1回に4人の生徒さんを教えます。それは待ち時間に他人の1対1の対峙と所作を見るというプロセスが、生徒さんにとって自分でお茶をたてることと同じ位、大きな学びになっていると気づいたからなんです。

  • 教えるという事の本質ですね。さて話は変わりますが、ストリートアカデミーについてはどのようなきっかけでお知りになりましたか?

    知り合いの方からご紹介いただいたのがきっかけです。ストリートアカデミーが目指している「ITを活用して、まなぶ・教える機会を増やし、まなびのハードルを下げ、多様性を人々に提示していく」という点が「お茶の敷居を下げてより多くの人に楽しみを伝えていきたい!」という自分の想いと大きく重なる部分がありました。特に、これまでITが十分に活用されてこなかった教育や伝統文化の分野では、ITを有効活用することで今まで出来なかったことが実現出来るチャンスを広げられると思います。

  • ありがとうございます。今後ストリートアカデミーで教えてみたいことは何ですか?

    以前一度だけやったことがあるのですが「日常生活にあるものでお茶をたてる」というテーマの茶会を開催したいです。例えば、お茶碗はコーヒーカップやカフェボウルで代替し、抹茶を入れる容器は牛乳瓶でもいい。身近にあるものでお茶が楽しめるということを学ぶ会です。ちなみに茶筌だけはどうしても代用することが出来ないのですが。泡だて器などで代用してみたことがあるのですが、どうもやはり茶筌の竹の“しなり”がないとお茶は美味しくできないですね(笑)。 お茶のグッズを揃えていくときに、自宅にある食器や100円ショップ、無印良品などを活用すると面白いです。茶道の世界では、これを「見立て」といいますが、100均でもとてもセンスのいい「見立て」を仕上げる生徒さんもいらっしゃいます。発想力の勝負です。

    色んな活動を通して、より多くの方に、茶道は思っているよりも気軽に出来る・始められる、と気づいていただきたいです。現在私は自分の時間の都合上1ヶ月に32名の生徒さんしか教えられないのですが、その中から一人でも多く「お茶って面白い!もっとやってみたい!」と思ってくれる方が出てくれれば嬉しい限りです。

  • 近藤さんの新しい文化を広めようというスタンスは、ストリートアカデミーの目指している「新たなスキルを気軽に学べる機会を増やす」というビジョンと本当に一緒ですね!是非これからも沢山の方がお茶という新しい世界に足を踏み入れて下さるよう我々も応援しています!本日はお忙しい中どうもありがとうございました!


  • 先生のプロフィール

    近藤 俊太郎

    近藤 俊太郎さん(Shuntaro Kondo)

    一貫してIT関連事業に携わる一方で、2005年から茶道を始める。2009年、「日中友好使節団(外務省 主催)」の一員として中国との文化交流プログラムへの参加をきっかけに総合芸術と呼ばれている茶道を広く知ってもらう活動として「茶団法人アバンギャルド茶会」を立ち上げる。

    宇宙研究者とのコラボレーション茶会(宇宙茶会)や芸術家と一緒に茶室を造る「丿貫(へちかん)プロジェクト」などのイベントを開催。また、百貨店やアートギャラリーでの現代茶の湯展示のプロデュースも手がける。

    師匠のもと修行中ではあるが、同世代の若者が気軽に茶道と接する場をプロデュースする。

先生の教えている講座

※2013年08月04日現在の情報です。

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